エレクトロニック・ハラスメント
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エレクトロニック・ハラスメントとは、電波や電磁波、レーザー、超音波などの媒体を意図的に人体に照射したり、身体にデバイスを埋め込まれたりすることで、人々に痛みや不快感その他の疾患を引き起こしたり、脳に音声や映像情報を伝えるなど、身体に悪影響を与えるという犯罪である。高度な軍事技術が使用されているという被害者たちの主張の一方で、複数の医学的専門家は、統合失調症などが原因の妄想である、と断定的に主張を繰り返している。
概要
エレクトロニック・ハラスメントとは、超音波や電磁波、レーザーなどを悪用し遠隔から特定の個人を攻撃する行為を指すと主張する団体が存在する。その一方で、統合失調症などの精神疾患による妄想の可能性があると指摘している精神科医などの専門家もいる。他の専門家は、これらの話を外国人拉致事件と比較する。
海外の対応
- 1999年1月28日、ロシア下院および欧州議会は人間の操作が可能な兵器を禁止する国際協定を要請。
- 2001年7月26日、ロシア下院は電磁兵器を禁止する法案を可決し、武器に関する連邦法第6条を改正。ロシア連邦大統領ウラジーミル・プーチンが署名をした。
- 2001年10月、アメリカ合衆国下院議員デニス・クシニッチが「精神工学(マインドコントロール)兵器」を禁止する条項を法案に追加し提案。ミシガン州、メイン州、マサチューセッツ州の州法がエレクトロニック・ハラスメント行為を禁止している。
被害
高度な科学技術使用によるエレクトロニック・ハラスメントを受けていると自覚する被害者は「標的にされた個人」と呼ばれる。心身に悪影響を及ぼす人権侵害行為を受け、その被害は様々である。被害者の頭の中に声を響かせて名前を呼び、その声は幾度も繰り返し被害者を嘲笑する。火傷のような身体的な感覚を引き起こす[4][9]。1人以上の加害者による身体的な監視の下にあるとも述べている。これらの被害者の多くは、正常な心理状態で普通の生活を送っており、その中には、成功したキャリアを持つ人々も含まれる。政府が科学技術を開発する為に頭の中への音声送信を行ったとの主張を立証するために、ニュース記事、軍事雑誌、機密文書の機密解除を引用する。
元英国軍情報部第5課(MI5)所属のマイクロ波の専門家であるバリー・トゥロワー博士や元CIAの諜報部員カール・クラークは、マイクロ波兵器使用により対象者の脳に音声幻覚を引き起こす事が可能であり精神疾患や癌等の病気を誘発できる、マイクロ波兵器による市民への人体実験が行われていたと証言している
事件
- 1951年2月18日、刑務所に投獄されていたペドロ・アルビズ・カンポス(英語版)(プエルトリコ独立運動の第一人者)は放射線実験の対象とされ、実験は1956年3月27日まで継続された。
- 1960年代から1970年代、旧ソ連在モスクワのアメリカ大使館にマイクロ波照射攻撃が行われていたことが発覚した。この事件の大部分は機密扱いとなっている。政府はマイクロ波に健康への悪影響はないと結論付けているが、大使館員と「オペレーション・パンドラ」の調査結果は非公開である[24]。1953年のモスクワ・シグナル事件(英語版)後、アメリカはマイクロ波照射の生物学的および行動的影響を調査している。
- 2008年、アメリカ合衆国カンザス州のジェームズ・ウォルバートは、以前に取引をめぐり不和となった仕事仲間から「放射線の衝撃を与える」と脅しを受け、その後、電気ショックのような感覚症状や電子的に生成された発信音、奇妙な音を感じるようになったと主張。カンザス州セジウィック郡地方裁判所に訴訟を起こした。ミズーリ州議会議員(共和党)ジム・ゲスト(英語版)がウォルバートの訴訟を支援した。同年12月30日、裁判所はウォルバートへの「電子的手段」による嫌がらせを禁止する命令を出した。
- 2016年後半以降、在キューバ米国及びカナダ大使館職員と在中国アメリカ領事館職員に対する音響攻撃疑惑が発生した。職員たちは原因不明の体調不良を訴えている[30]。
疾病説[編集]
心理学者のロレイン・シェリダンは、法医学精神医学と心理学の機関誌に集団ストーカー(英語: gang-stalking)の研究を共著した。シェリダンは、「TIの現象は何が起こっているのかという説明として、集団ストーカーを思いついた妄想症状を持つ人々の観点から考える必要がある」と述べている。メンタルヘルスの専門家は、対象者が幻覚や標的とされたり、また、嫌がらせされたりすることは妄想障害または精神病から生じると説明できると述べている。イェール大学の精神医学教授ラルフ・ホフマンは、人々はしばしば、政府の嫌がらせ、神、死亡した親戚などの外部の情報源を主張しており、外部からの影響に対する信念が妄想的であると説得するのは困難であると示している。
パームスプリングスの精神科医アラン・ドラッカーは、オンライン・サポートネットワークとマインドコントロールを恐れている人々が管理する多数のウェブサイトの多くで妄想障害の証拠を特定した[34]。英国の臨床心理士ヴォーン・ベルは、精神疾患に対するインターネットの影響を研究し、2006年に研究対象のオンライン・マインドコントロールのサイトを「精神病の可能性が高い」と判断した[1]。一部の精神科医の研究では、そのようなサイトの共通の妄想の共有と受容は、グループ認知療法の一形態として機能する可能性があると述べている。
遠隔操作が可能な技術や兵器
精神工学兵器
1987年、陸軍研究所から委託されたアメリカ国立科学アカデミーの報告書は、精神工学について、1980年代の事例解説や新聞および書籍でのサイキック戦争という主張の「多岐にわたる例」の1つである指摘している。この報告は「超空間核爆弾」などの精神工学兵器の主張と、ロシアの精神工学兵器がレジオネア病とアメリカ海軍の潜水艦沈没の原因であるとの信念を引用している。委員会は、軍事的意思決定者による報告や経緯、そしてそのような兵器の潜在的な用途が存在するにもかかわらず、「科学技術文献には精神工学兵器の主張を裏付けるものは何もない」と述べている[50]。1990年代にはロシアで精神工学兵器が研究されていたとされる。1998年、軍事アナリストのティモシー・L・トーマス中佐は、アメリカ陸軍士官学校の季刊誌「パラメーター」で論文を発表し、新兵器の目的は人間の精神と身体を操作することであると述べている[51][52]。
エレクトロニック・ハラスメントと誤解される技術や実験
電波で大人しくなる闘牛と闘牛士 - ニューヨークタイムズで報道された、ホセ・デルガド博士により、闘牛士が電波を牛に送信すると攻撃的で無くなるという実験が行われた。この実験により「電波で脳を制御し、性格を操作できる」と認知されたが誤解である。電波はラジコンの技術であり、牛の脳の表面に付けられた受信機で電気信号に変換され、脳に埋め込んだ電極を刺激しているだけである。
コミュニティ
2020年現在、エレクトロニック・ハラスメントの被害者団体は世界中に存在し、毎年8月には大規模な抗議集会「TI-DAY」が世界各都市で行われている。 被害を受けていると主張する一部の人々は、公的な人物から何らかの支援を得て精神工学やその他のマインドコントロール兵器使用停止の運動をしている。